聞き方が意図を左右する
営業の現場でよく言われる「意図を読む力」ですが、
実はその前段階の聞き方が非常に重要です。
同じ質問でも、
同じ沈黙でも、
同じ頷きでも、聞き方次第で相手の意図が出る場合と、心を閉ざす場合があります。
重要なのは、情報をただ聞き取るのではなく、
相手の本音を自然に引き出す聞き方を意識することです。
相手は本音をすぐに話さない
顧客は全部は言わない
顧客は最初から本音をすべて話すことはほとんどありません。
理由は様々です。
- 警戒心がある
- 話すのが面倒
- 言語化できていない
- 話していいか判断できない
そのため、表面上の言葉だけで判断すると、意図を見誤りやすくなります。
聞き方次第で深さが変わる
適切な聞き方は、相手の思考を深めるスイッチになります。
例えば「この部分はどういう理由ですか?」と質問するだけで、
相手は整理しながら本音を語り始めます。
質問は顧客の意図を知るためのカギです。
聞き方の技術① 最初の言葉を決めつけない
顧客の第一声は、最も言いやすい言葉であり、必ずしも本音とは限りません。
例:
顧客「コストを抑えたいだけです」
実際「社内で失敗できないから、安全な選択肢が欲しい」
ここで重要なのは、表面の言葉を鵜呑みにせず、否定もしないことです。
■ 聞き方の技術② 整理されていない情報を整える
顧客の意図や不安は、きれいに整理されていないことがほとんどです。
話が飛ぶ・断片的になるのは、意図が少しずつ出ているサイン。
■ 意図を探るポイント
- 話が逸れても遮らない
- 断片をメモし、後で整理して返す
- 「整理するとこういうことでしょうか?」とまとめる
この整理の代行ができる営業は、意図を素早く読み取れます。
顧客本人すら自身の意図を理解できていないことは多々あります。
話を聞きながら整理することで、顧客自身の意図を気づかせることも営業には必要な能力です。
聞き方の技術③ 感情の揺れを見逃さない
意図は言葉だけでなく、感情の揺れに表れることが多いです。
会話の中で起きるサインをキャッチしながら、顧客の意図を把握しましょう。
見逃さないサイン
- 声の強弱やトーンの変化
- 表情の変化
- 話すスピードや間の変化
- 目線や言葉の選び方の変化
広げ方の例
- 「今、少し気になると言われましたが、どんな点が心に引っかかっていますか?」
- 「以前に何かあったのでしょうか?」
こうして表面の情報ではなく、本音の入口を引き出します。
聞き方の技術④ 沈黙を恐れない
沈黙は、意図が形になりかけている瞬間です。
多くの営業は沈黙を嫌い、話を足してしまいますが、それでは本音は出ません。
ポイント
- 相手が沈黙したら、まず待つ
- 焦って補足説明をしない
- 相手の考えが整理されるのを待つ
沈黙を活かすことで、隠れた本音を聞き出せます。
沈黙は、顧客自身が自分の気持ちを言葉にするのに整理しているタイミングでもあります。
その時は、待つ、「大丈夫ですよ、ゆっくり考えてください」と声掛けをする、など落ち着ける空気感を意識しましょう。
聞き方の技術⑤ 言ったことと言えなかったことの両方を見る
相手が話した内容だけでなく、話さなかったことにも意図が隠れています。
意識するポイント例
- 質問にスムーズに答える → 決まっている部分
- 答えが曖昧 → 迷っている・意図の中心
- 話題を避ける → 隠したい情報
この視点を持つことで、顧客が自分でも気づいていない意図を把握することができます。
顧客が話さなかった意図に対して予想をつけ、顧客にヒアリングを行うと、意図にたどり着く近道です。
聞き方の技術⑥ 踏み込みの深さを調整する
深く聞き出すことは必要ですが、踏み込みすぎると警戒されます。
重要なのは、相手の反応を見ながら深さを調整することです。
見極めポイント
- 身体が後ろに引く
- 言葉を濁す
- 表情が固まる
こうしたサインがあれば、角度を変えたり少し距離を置いた聞き方に切り替えます。
意図を知ったところで、顧客が警戒したり信頼が下がっては、契約に繋がることはありません。
実例 聞き方で意図が明らかになった瞬間
例1 曖昧な表現の裏に本音を引き出した
顧客「まぁ…とりあえず検討ですかね」
顧客:「実は上司が新しいことに慎重で…」
上記のように聞き方を変えることで、回答の理由を知ることができました。
例2 沈黙の中に本音があった
営業「この部分はいかがですか?」
顧客 ……(沈黙)
顧客「前の取引で失敗したことがあって慎重になっています」
沈黙に対して、あえて待つ余裕のある姿勢が、顧客の言葉を引き出すことに成功しました。
例3 優先順位を引き出して意図を明確に
顧客 「全部大事なんですよね」
顧客「一番重要なのは予算感ですね」
上記の聞き方によって、顧客の意図が明確化し次の提案がしやすくなりました。
まとめ 聞き方の深さが信頼を生む
意図を読み解く営業とそうでない営業の違いは、
目の前の言葉をどう扱うかではなく、どう聞いたか にあります。
今日から実践するポイント
- 最初の言葉を決めつけない
- 断片的な話も許容する
- 感情の揺れを観察する
- 沈黙を活かす
- 言っていない情報を見る
- 踏み込みの深さを調整する
聞き方の質が上がれば、顧客は「自分の意図を理解してくれる営業」と感じ、深い信頼につながります。
この技術は特別な才能ではなく、聞き方を意識して磨き込むことで誰でも習得可能です。

