意図は隠れているのではなくにじみ出ている
営業をしていると、こんな経験はありませんか?
- 「検討します」と言われたのに進まない
- 「大丈夫です」と言われたのに不安そう
- 「急いでます」と言う割に資料だけで判断しようとする
- 「一旦持ち帰ります」の意味が毎回違う
これらは、言葉そのものではなく
言葉の裏にある意図のパターンが違うからです。
実は、顧客の発言にはいくつかの「意図の型」が存在します。
この型を知っておくと、言葉の裏側がスッと読み解けるようになります。
今回は、読み解きの精度が上がる意図を分類するための5つのパターンを紹介します。
パターン① 結論を言わない「保留型の意図」
表面的な言葉
- 「検討します」
- 「また連絡します」
- 「一旦持ち帰ります」
裏にある可能性
保留の意図には実は3種類あります。
- 判断する材料が足りない(情報不足)
- 判断したいが決定権が弱い(社内構造の壁)
- 現時点で断っている(断りの柔らかい言い回し)
これらは言葉は同じですが、意図はまったく異なります。
見抜くポイント
- 質問したときに目線が上を向く → 「情報不足」
- 上司や他部署の話が多い → 「決裁の壁」
- 具体的な話を避ける → 「実質断り」
営業の誤解
「検討します」をそのまま信じると失注が増えます。
言葉の裏にある顧客の意図、本音をちゃんと確認するコミュニケーションを行っていきましょう。
パターン② 理由を語らない「防御型の意図」
表面的な言葉
- 「特に問題ないです」
- 「なんとなく気になるだけです」
- 「大丈夫です」
裏にある可能性
顧客は本心を隠しているのではなく、
自分でも理由を整理できていないことが多い。
心理的には
- 失敗したくない
- 過去の経験が邪魔している
- 比較対象が多すぎて迷っている
など、言語化できない不安がまとわりついています。
見抜くポイント
- 小さく首を振るが言葉で否定する
- 肩が少し固くなる
- 「なんとなく」を繰り返す
- 表情と言葉が合っていない
本当に言葉通りの場合もありますが、別の意図や本音がある場合もあります。
その言葉の真意は何なのか意識しましょう。
営業の誤解
質問を深掘りすれば本音を言わせられる、と考えると逆効果。
防御されている時は整理の手伝いが先。
どこが引っかかっているのか、なんとなく何が気になっているのか、顧客に寄り添って整理しましょう。
この作業を怠ると、急に失注する、なぜか全く話が進まないというリスクに繋がります。
パターン③ 要求が多い「要望型の意図」
表面的な言葉
- 「ここがもう少し安くならない?」
- 「このオプションも付けられます?」
- 「他社と比較してどうですか?」
一見すると値下げ要求に見えますが、
実は顧客の本当の意図は違うことが多いです。
裏にある可能性
- 安心材料が欲しいだけ
- 営業の本気度を試す圧
- 社内説明のための武器が欲しい
見抜くポイント
- 値下げの根拠を語らない → 安心材料がないだけ
- 他社比較をするが、実は見ていない → 説明武器を探している
- 話すたびに要求が変わる → 試しの可能性
営業の誤解
多くの営業は「この人は値段しか見ていない」と誤解する。
しかし実際には
「決めたいけど、心の穴が埋まっていないだけ」
のケースが非常に多いのです。
最終的な決め手がほしい中で出ている言葉の可能性があります。
この意図をキャッチし、うまく提案することで契約に繋がる可能性が高くなります。
パターン④ 話を聞く姿勢に意図が出る「探索型の意図」
言葉ではなく、聞き方で意図がわかるタイプです。
聞き方の特徴
- ゆっくり頷く
- 質問が増える
- 話をかぶせてこない
- メモを取ることが多い
こういう顧客は
新しい可能性を探索しているタイプ。
裏にある可能性
- 現状に不満がある
- 未来の選択肢を増やしたい
- すぐには買わないが、踏み込んだ話は聞きたい
見抜くポイント
- 「なるほど」をよく言うが買わない → 情報探索の段階
- 質問が曖昧 → まだ決めるフェーズに入っていない
- こちらの反応を試す質問をする
営業がやりがちなミス
情報探索フェーズに対して「クロージング」をかけようとすること。
顧客はまだ検討するためのスタートラインに乗っていない可能性があります。
このタイミングでクロージングをかけることは、顧客からすると不快に感じる可能性もあります。
このタイプの場合は、クロージングを慎重に行いましょう。
パターン⑤ 急ぐ理由を言わない「本音隠しの急ぎ型の意図」
表面的な言葉
- 「急いでいるんです」
- 「とにかく早く欲しい」
- 「できれば今日中に」
急ぎの言葉は意図が読みやすいように思われがちですが、
実は裏に3つのパターンがあります。
裏にある可能性
- 過去の失敗による焦り
- 社内指示によるプレッシャー
- 価格交渉を有利にしたい急ぎの演出
見抜くポイント
- 細かい部分に興味を示さない → 本当に焦っている
- 質問が少ないのに値段だけ聞く → 価格交渉の布石
- 「実は…」を言いかけて止まる → 社内プレッシャー
営業の誤解
急いでる=見込みが高いではないことを理解しておきましょう。
しかし、ここで迅速な対応をすることで一気に信頼を勝ち取る可能性があります。
そうなると、今回の提案がダメでも次回は契約に繋がる可能性が高くなります。
未来のことも考えて急ぎの対応を行っていきましょう。
営業が持つべき「意図パターンの扱い方」
① まず言葉よりパターンを見る
「検討します」「大丈夫です」をそのまま受け取ると失敗します。
営業はまず
どのパターンの意図が含まれているか?
を見極める。
② パターンがわかれば対応が決まる
- 保留型 → 情報を整える
- 防御型 → 整理の代行
- 要望型 → 不安の根を探す
- 探索型 → 情報提供と関係構築
- 急ぎ型 → 焦りの理由を探る
パターンがわかれば、対応を間違えない。
③ パターン分析は相手を操作するためではない
目的は、相手が言葉にしづらい本音の交通整理を手伝うことです。
意図や本音を察してくれる営業なら、お願いしやすいと思うものです。
寄り添う姿勢と意図を理解した賢いコミュニケーションで信頼関係を構築しましょう。
実例 同じ言葉でもパターンが違うと対応が変わる
ケース 「検討します」
- 保留型(情報不足)
→「判断に足りない部分ってありますか?」 - 防御型(整理できていない)
→「違和感のある部分、一緒に整理しましょうか?」 - 探索型(比較中)
→「他に見ているものはありますか?」 - 本音は断り(やんわり断り)
→「無理に進めませんので、率直に気になった点を教えてください」
同じ言葉なのに、意図ごとに全く違う会話になる。
まとめ 意図は読むのではなく見つける
意図を読むために必要なのは、
特別な洞察力でも、心理学の知識でもありません。
必要なのは
相手の言葉の裏にあるパターンを知っているかどうか。
パターンがわかると、
- 言葉の意味が瞬時に理解できる
- 表情や反応の見方が変わる
- 商談のズレがなくなる
- 顧客が話しやすくなる
- 信頼が早く生まれる
営業にとって「意図のパターン」は、
言葉に隠れた本音の地図のようなものです。
知っているだけで、商談の景色が一気に変わります。
ぜひ取り入れて、スムーズな契約締結を行っていきましょう。

