営業の世界では「聞く力」「伝える力」が重要だと言われ続けています。しかし、多くの営業が見落としている力があります。それが 相手の意図をくむ力 です。
お客様は、いつも本音をそのまま口にしてくれるわけではありません。
「検討します」「まずは資料だけください」
そんな何気ない言葉にも、本当の意図が隠れています。
その意図をつかめる営業と、表面の言葉だけを追いかける営業では、結果に大きな差が生まれます。
本記事では、なぜ営業において 意図をくむ力 が欠かせないのかを、現場の実例を交えながらわかりやすく解説します。
なぜ「言葉どおりに受け取る営業」は成果が出ないのか
営業経験者なら誰しも、こんな状況に心当たりがあるはずです。
- 「興味あります」と言われたのに結局買わなかった
- 「検討します」と言われたまま連絡が途絶えた
- 説明しても説明しても、なぜか伝わらない
これは、あなたの提案が間違っていたわけではありません。
多くの場合、 顧客の本当の意図に合わせた対応ができていなかった だけなのです。
お客様は、
本音をやわらかく表現したり、
角が立たない言い方に変えたり、
気をつかった表現をしたりします。
そのため、表面の言葉だけを受け取ると「ズレ」が生じ、意図したコミュニケーションができなくなってしまいます。
「意図をくむ力」が営業の成果を左右する3つの理由
ここでは、なぜ意図をくむ力が営業に不可欠なのかを、3つの視点から説明します。
理由① お客様は本音をストレートには話さないから
営業の場では、本音をそのまま言いにくい状況が多くあります。
- まだ信用しきれていない
- 断ると悪いと思っている
- 細かい事情をすべて説明するのが面倒
- 「わかってくれるだろう」という期待
これらが重なると、どうしても言い回しが曖昧になります。
例えば…
■「検討します」
→本音:まだ決める材料が足りない / 比較対象がある / 不安が残っている
■「安ければ買います」
→本音:本当に欲しいわけではない / 他社との比較をしたいだけ
■「今はタイミングじゃない」
→本音:上司の承認が取れていない / 今の提案内容では動けない
上記のように、お客様の表面上の言葉と、本音は違うことが多々あるのです。
その、本音を察して動くのも営業として大変重要な能力です。
理由② 意図をつかめる営業はズレない提案ができるから
提案が刺さらない営業の共通点は、
「お客様が本当に求めていること」
と
「自分が考える提案」
がズレていることです。
逆に、意図をくむ営業はこのズレがありません。
例えば、顧客が「費用を抑えたいんですよね」と言っていたとします。
これだけで、お客様は
「そう、それが言いたかった!」
と感じ、信頼が生まれます。
理由③ 意図をくむ営業は安心して任せられる存在になるから
お客様は「自分の意図を理解してくれる相手」を信用します。
人間は心理として、
- 説明しなくても察してくれる人
- 自分の立場や状況を理解してくれる人
- 雑な扱いをしない人
に安心感を持つものです。
通じ合える人にお任せしたいというのは、誰もが思う心理です。
それは、営業でも同じです。
意図をくむ力は、
「この人なら任せて大丈夫」
「本音を話しても大丈夫」
という信頼をつくる最高の武器になります。
お客様の意図が隠れやすいシーン5選
営業現場でよくある「意図が隠れた言葉・行動」を紹介します。
①急にトーンが変わる、表情が硬くなる
例:興味がありそうだったのに、急におとなしくなる。笑顔から表情が硬くなった。
→不安ポイントが出てきた可能性大
②質問が減る
例:前向きで色々と話が盛り上がり、色々聞かれていたのに質問が減る
→提案が難しく感じている / イメージができていない / 理解が追い付いていない
③決断の場面で急に慎重になる
→リスクへの不安がある / 決定権の問題 / 変化に対して抵抗がある
④話題を変えられる
→そのテーマに触れられたくない / ネガティブな情報がある
⑤曖昧な返事が増える
→納得していない / 他社との比較中 / 判断する段階にない
意図をくむ営業は、こうしたサインに敏感です。
お客様が何も言わなくても、自らキャッチして対話を変えていきます。
意図をくむ営業になるための3つのポイント
意図を読めるようになるために必要なのは、特別なスキルではありません。
日常のコミュニケーションの中で少し意識すれば身につく力です。
「表面の言葉ではなく、背景を見る」
お客様の発言を聞くときは、
「なぜそう言ったのか?」
という背景に意識を向けるのがコツ。
- 立場はどうか
- 社内の状況はどうか
- 何を怖がっているか
- 何を達成したいのか
背景が見えると、言葉の意味が変わって見えます。
「仮説を持って話す」
意図を読む営業は必ず「仮説」を持っています。
例:
「たぶんこの人は決裁者ではない」
「本当は工数を減らしたいのでは?」
「上司の承認が不安なんだろうな」
仮説を持つと、質問も深くなり、会話に筋ができます。
この仮説の数と精度は経験数が大きく影響しますので、たくさんの経験を積んで成長していきましょう。
「小さなサインを見逃さない」
意図は、言葉よりも反応に表れます。
いわゆる非言語コミュニケーションです。
- 眉の動き
- 少しの間
- 表情の変化
- 声のトーン
- 姿勢の変化
これらを意識して観察できる営業は、お客様の本音をすばやくキャッチできます。
意図をくむ営業が信頼される瞬間(実例付き)
最後に、現場でよくある「意図をくんだ一言が商談を動かす瞬間」を紹介します。
■例1 「スケジュール厳しいです…」と言われたとき
表面:「納期を短くしてほしい」
本音:「失敗したくない」「準備が不安」
→意図をくむ営業:「では、重要な部分だけ先に進めて、段階的に納品しましょう」
→顧客:「それなら安心して進められます」
■例2 「予算が限られていて…」
表面:「安くしてほしい」
本音:「失敗すると評価が下がる」「初めての導入で慎重」
→意図をくむ営業:「まずは小さく試し、成果が出たら広げる形にしましょう」
→顧客:「そういう提案を待っていました」
■例3 「上司に相談してみます」
表面:「持ち帰って検討する」
本音:「今のままでは上司を説得できない」
→意図をくむ営業:「上司に説明するための要点資料を作りましょうか?」
→顧客:「それをお願いしたかったんです!」
まとめ 意図をくむ営業は信頼される営業になる
営業は「商品を売る仕事」ではなく、
「相手の意図を理解して、最適な決断を助ける仕事」です。
そのために必要なのが、
表面の言葉ではなく、奥にある意図を読み取る力。
意図をくめるようになると…
- 無駄な提案が減る
- コミュニケーションのズレがなくなる
- 顧客が安心して本音を話してくれる
- 自然と信頼され、選ばれる存在になる
営業力に聞き方のスキルを足すのではなく、
「意図を読み、くみ取る力」 を磨くことが、これからの営業のスタンダードになります!

