お願いが上手な人は、なぜか結果も出している
「どうやったらもっと契約が取れるんだろう?」
「お客様に動いてもらうには、何を伝えればいいんだろう?」
営業の現場で、そんな悩みを口にする人は少なくありません。
ところが、不思議なことに、同じ商品を扱っていても「結果を出す営業」と「苦戦する営業」には、ある小さな違いがあります。
それが「お願いの仕方」です。
たとえば、こんなシーンを想像してみてください。
Aさんは、商談の最後にこう言います。
一方、Bさんはこう伝えます。
内容は似ています。
けれど、受け手の印象はまったく違います。
Aさんの言葉には「売りたい気持ち」が強く、Bさんの言葉には「寄り添う姿勢」がにじみます。
つまり、お願い上手な営業は、お願いを通して信頼を積み上げているのです。
お願いは「弱さ」ではなく「信頼のサイン」
多くの営業マンが誤解しています。
「お願い=弱みを見せること」だと。
でも、実はその逆。
お願いできるということは、すでに相手との関係に信頼の土台があるということです。
人は、自分を信頼してくれる相手にほど「力になりたい」と思う生き物です。
心理学では「返報性の原理」と呼ばれる現象があります。
これは、「相手が自分を信頼してくれたら、こちらも応えたくなる」という自然な人間心理。
営業でも同じです。
「〇〇さんに頼まれたから動こう」と思ってもらえる関係性をつくれるかどうか。
その差が、最終的な成果を分けます。
頼まれ下手な営業が陥る3つの落とし穴
「お願いするのが苦手なんです」という営業は少なくありません。
彼らに共通しているのは、次の3つのパターンです。
① 「迷惑をかけてはいけない」と思いすぎる
お願い=負担をかける、迷惑をかけるという思い込み。
でも本来、お願いは「相手を信頼しています」というサイン。
迷惑ではなく、信頼の証拠なのです。
あなたも、もし人から頼りにされたら嬉しいと思いませんか?
実は、上手にお願いすることは相手との人間関係を深くすることにもつながるのです。
② 「自分が頑張ればなんとかなる」と抱え込む
頑張り屋の営業ほど、全部自力で解決しようとします。
しかし、営業はチーム戦。
社内のサポートや顧客の協力を引き出すことも立派な実力です。
自分一人でできることは、そんなに多くありません。
今ある全てを使って、「どうしたら良い形になるか」を考える癖をつけましょう。
③ 「お願い=売り込み」だと思っている
「お願いすると売り込みっぽくなる」と心配する人もいます。
けれど、相手のためになるお願いは、売り込みではなく提案です。
お願いとは「あなたにとっても良いことですよ」と伝える行為なのです。
④ 自分がしてもらうことばかり考えている
自分だけが良くなるお願い、通称「くれくれ君」になっている場合があります。
そんな人のお願いは聞きたくないし、関わりたくなくなってしまいます。
上手なお願いとは、双方がよくなる形であることが重要です。
お願い上手な人がやっている3つの共通点
では、お願い上手な営業はどんなことをしているのでしょうか?
彼らには、3つの共通点があります。
1. 相手の立場に立ってタイミングを読む
お願いは、内容よりも「いつ言うか」で決まります。
商談での空気、相手の忙しさ、会話の流れ。
相手が「今なら話を聞ける」と思える瞬間を逃さないこと。
お願い上手な人ほど、相手の表情やトーンをよく観察しています。
2.共感を先に伝える
お願いの前に「理解していますよ」という共感を添えることで、相手の防御反応が消えます。
たとえば:
共感があるだけで、「聞く姿勢」が生まれます。
お願い上手な営業は、相手の感情を軽んじません。
3. 感謝を必ず言葉にする
お願いの直後に「ありがとうございます」を言える人は信頼されます。
人は「感謝されることで、自分の存在価値を感じる」からです。
そして一度感謝されると、「次も協力しよう」と思うようになります。
信頼は、お願いと感謝の積み重ねで育つのです。
ストーリーで学ぶ 「お願い上手が関係を変えた瞬間」
ここで、実際のエピソードを紹介します。
ある営業マン・田中さん(仮名)は、いつも「忙しいから」と顧客に断られていました。
提案内容は悪くないのに、なぜか話を聞いてもらえない。
ある日、上司からこう言われました。
「お前、お願いの仕方が取引っぽいんだよ」
田中さんは、ハッとしました。
自分のお願いは「相手に動いてもらうための要求」でしかなかったのです。
その日から彼は、「相手が気持ちよく応えたくなるお願い」を意識するようにしました。
「〇〇さんの今後の展開にプラスになると思うので、ぜひご意見を伺いたいです」と切り出すように。
数週間後、以前は冷たかった担当者から連絡が入りました。
「田中さんの提案、うちの社長にも話してみました。ぜひ一緒に進めましょう。」
変わったのは、商品でも価格でもなく「お願いの仕方だけ」でした。
信頼を生む「お願い」の型
お願いには「伝え方の型」があります。
心理的ハードルを下げるには、次の3ステップを意識すると効果的です。
STEP1:共感と理解を示す
「〇〇の件、大変ですよね。私も同じ立場なら悩むと思います。」
相手の立場を理解している姿勢を見せます。
これだけで相手の緊張がほぐれます。
STEP2:お願いの理由を明確に伝える
「今回の件は、〇〇様の課題解決に直結する内容なので、ぜひ一度ご検討いただきたくて。」
なぜお願いするのかを伝えることで、相手にとっての意味が生まれます。
STEP3:感謝で締める
「お忙しい中、検討いただけるだけでも本当にありがたいです。」
お願いは、押しではなく感謝で包むことで信頼を残します。
「お願い」は信頼を深めるコミュニケーション
営業の現場では、お願いの多くが契約を取るための手段になりがちです。
けれど、本質はそこではありません。
お願いとは
相手との間に「信頼を築くコミュニケーションの橋」をかけること。
信頼があるからお願いでき、
お願いすることでまた信頼が強くなる。
この信頼のループを回せる人こそ、「お願い上手な営業」なのです。
お願い上手は、結局人を信じる力がある
お願いが上手な人は、「相手を信じる力」があります。
「この人ならきっと応えてくれる」と思えるからこそ、素直に頼める。
そして、その信頼が相手にも伝わり、
「あなたのために力になりたい」と思わせる。
営業とは、商品ではなく信頼を動かす仕事です。
お願いを通して人の心が動く瞬間を、
あなた自身の現場でも、ぜひ体感してみてください。

